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【第7期エピローグ】千年紀の懺悔【語り:クレイ】

いきなり経緯もなく書いた7期のエピローグ。
いわゆるバッドエンドです。


5国間の争いが終結した後も私はマッカで彼らと行動を共にしていた。
少年時代からの親友ウィルフレドとフィオナ、そしてフィオナを宿主とする魔獣ベルナと共に。
オーラム軍からの命令で彼らのもとに派遣されてからもう数年。軍の命令は危険な魔眼を持つウィルフレドの監視もしくは殺害だったが、
そんなことが私に出来るはずもなく、結果的にオーラムとは袂を分かつ事になってしまった。
だが、今はそれで良いと思っている。戦争は終わってオーラムに刃を向ける必要は無くなったのだから。
このまま彼らと共にあり、いつかはフィオナを元の体に戻せればそれで良い。

それで良かったはずなのに―

あれは、刻碑歴1000年4月のある日の事。
その時はフィオナが「表」に出ていた。いつもの、自分の体が魔獣の侵食を受けている事などまるで気にしていない様子で、
いつものように夕食の材料を買いに出掛けていた。
昔のような穏やかな日常・・・
しかし、出掛けてから少しも経たない内に彼女は倒れ、一緒にいたウィルフレドに抱えられて戻ってきた。
予感はした。もうその体に彼女の領域は殆ど残っていなかったのだ。
気が弱かった子供の頃に戻ったように動揺するウィルフレド。
フィオナの方も子供の頃そうしていたようにウィルフレドを優しくなだめていた。
私はそんな2人の様子を呆然と眺めているしか出来なかった。


―ベルナの事、よろしくね。


最後にそうこぼして、彼女の存在はその体から消滅した。
そして、もう1人の彼女―ベルナが目を覚ます。
目覚めたベルナは完全に取り乱していた。自分がフィオナを喰った、自分がフィオナを殺した、と。
普段の明るいベルナからは考えられないような嘆き。
そんな彼女を今度はウィルフレドがなだめている。


「お前だけは、俺の傍から消えないでくれ」
ウィルフレドはそう言うと、ベルナをぎこちなく抱きしめる。
「あたしは、フィオナを食べてまで生きていたくないよ」
そして、ベルナはウィルフレドの眼帯に手を伸ばす。
露わになる金色の右目。
「最後は、ウィルの手で終わりたいから。お願い、その眼であたしを見て」
見つめあう形になる2人。視線を逸らそうとすればいくらでも出来るはずなのに、
ウィルフレドの魔眼は真っ直ぐとベルナを捉えている。
魔眼は発動していた。もうどうしようもなかった。
「ウィルが受け入れてくれて嬉しかった。フィオナやあたしの事、忘れないでね。クレイも」
泣き笑いで言った彼女の姿が世界に解けていく。
ウィルフレドはそんな彼女から目を逸らせないまま泣いていた。
ベルナが消滅した後、ウィルフレドはその場に座り込み、しばらく動かなかった。
私も何も言うことが出来なかった。


だいぶ長い時間沈黙していたと思う。突然ウィルフレドがいつもの淡々とした調子で私に呼びかけてきた。
「なあ、クレイ。」
「ああ」
「お前がここに来た理由、俺を消すためだろ」
見抜かれていた。
「真面目で忠誠心もあってお堅いお前が軍を脱走するなんて、少し考えればおかしな話だ」
「・・・なぜ今まで気付かない振りを?」
「お前は昔から今ひとつ甘いから、そんな事するわけないって思ってた」
「はは、そうか」
「そうだよ。はは・・・」
そうして2人で空虚に笑い合った。
「・・・クレイ、もう良いぜ。俺を消せ」
「な・・・」
「それが目的なんだろう?俺を消してさっさとオーラムに帰れよ。ここはお前の居場所じゃない。お前は故郷を守れ」
「そんなこと、出来るわけないだろう!」
思わず声を荒げてしまうがウィルフレドは意に介した様子もない。
「もう良いんだ。フィオナも、アイツもいなくなっちまったからな。生きている意味がない。せめてクソ親父を見つけ出して一矢報いてからとも思ったが、
さっきので魔眼が完全に覚醒したみたいだ。早くしないと世界がヤバいぜ」
「バカな、あんな村のおとぎ話を信じているのか!あれがお前の事を言っているとは限らないだろう!」
「金色の眼差し、黄昏時に世界を呑み込む・・・か。確かに、俺の事を言っているとは限らないが、逆に俺の事を言っている可能性もあるってことだよな。
不確定な要素は潰したほうが良いって昔お前が言ってただろ。俺は自分が世界を、故郷を消し去ってしまうかもしれないなんて耐えられない。
頼むからやってくれ。俺は故郷を出てマッカに付いた身だ。お前とは元から敵同士だったんだから何も気に病むことはない」
そう言うウィルフレドの右目が金色の光を増していく。
何が起きる?いや、何も起きないかもしれない。しかし・・・
私は・・・俺は決断した―


あれから数ヶ月、私はオーラムに戻っていた。
「故郷を守れ」という親友の言葉を胸に。
あの決断が正しかったのか、今でも分からない。
許されるのならもう1度やり直したい。だが、それは所詮無理な話だ。
なあウィル、どうしようもない罪と、いつまでも消えない痛みを背負って俺は生きていくよ。
ふと、オーラムの穏やかな風の中に金色の眼差しを優しく感じた。

fin

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